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潰瘍性大腸炎の初期症状とは? 原因や治療方法をわかりやすく医師が解説

潰瘍性大腸炎の初期症状とは? 原因や治療方法をわかりやすく医師が解説
投稿日
2023.02.17
更新日
2024.08.02

潰瘍性大腸炎とは?

潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)とは、大腸の粘膜に原因不明の炎症が生じ、症状が悪化する期間(活動期)と、軽快する期間(寛解期)を繰り返す慢性の病気で、ヒトに伝染することはありません。国内における潰瘍性大腸炎の患者は推定22万人とも言われ今後も増加していく傾向にあります。

男女比は1:1なので罹りやすさに差はなく、発症年齢のピークは男性20歳~24歳、女性は25~29歳です。しかし子どもや高齢の方などにも発症が見られるため、年齢・性別を問わず誰でも罹りうる病気です。

潰瘍性大腸炎の原因は?

実は潰瘍性大腸炎の原因はまだはっきりとわかっていません。ウイルスや細菌が体内に入ってきた際に免疫系が働くことにより、腫れや痛み、発熱などの反応が起こることを「炎症」と呼び、腸内でこの炎症が過剰に起こる病気を「炎症性腸疾患」と言います。

ウイルスや細菌のせいでも、薬の影響でもなく、原因となる病気も見つからず、なぜか大腸で免疫反応が過剰に起こっているというのが潰瘍性大腸炎です。ちなみに似た病気として「クローン病」がありますが、こちらは口から肛門までどの位置にも炎症が起こるのに対して、潰瘍性大腸炎は大腸だけに炎症が起こるという違いがあります。

潰瘍性大腸炎もクローン病もその原因が不明であり「これで治る!」という治療法も確立されていないため厚生労働省が認める指定難病にも定められています。「難病」ときくと命に関わるのでは、と心配になるかもしれませんが、通院や服薬により炎症を最小限にコントロールし、今までと変わらず仕事をしたり、旅行や趣味などアクティブに楽しまれている方もいらっしゃいます。

潰瘍性大腸炎とストレスとの関連について

先にお伝えしたとおり潰瘍性大腸炎の原因は不明ですので、ストレスを溜めているせいで発症する、悪化すると決めつけることはできません。

ただし心と身体は繋がっていますから、精神的なストレスを感じ続けるとお腹が痛くなったり吐き気がするという人もいるでしょう。ストレスが胃腸に出るという説ですね。もしかしたらストレスを感じる環境・生活のせいで食生活や睡眠の乱れが起こっていて、そちらが原因で炎症が起こっている可能性もゼロではありません。

ストレスはあらゆる病気を悪化させると言われていますし、少なくともストレスの原因に心当たりのある方は、その軽減のために何らかのアクションを起こしたほうがよいと思われます。

潰瘍性大腸炎の症状と検査方法

潰瘍性大腸炎の初期症状は、腹痛や下痢、血便です。「特に変なものは食べていないのに下痢が何ヶ月も続いている」と来院される方もいます。また便の状態にも特徴があり、「ふわふわした粘膜が便に混じっている」といつもと違った下痢に驚く方もいます。下痢は続いても痛みはそれほどでもない方もいるので「なんだか最近お腹がゆるいなぁ」と放置しているケースもあるようです。ここから重症化していくと、貧血や発熱、体重の減少も見られます。

これらの症状がある場合は内視鏡カメラを入れて目視の検査と組織検査をして、潰瘍性大腸炎の特徴があれば治療を開始します。

潰瘍性大腸炎の治療について(内科的治療)

現在、潰瘍性大腸炎を完治させる内科的治療法は見つかっていません。そのため腸の炎症を抑える薬物治療を行い、寛解期が長く続くように症状のコントロールを試みます。内服薬や座薬で炎症が落ち着いていれば、特段の症状もなく健康な人とほとんど同じ生活ができます。

内服薬として処方するのは主にペンタサなどの5-アミノサリチル酸製剤です。ただし、炎症が強くなってくると副腎皮質ステロイド剤のプレドニンを使用します。この状態だと健康な人と全く同じ生活は難しくなりますが、ほとんどの患者さんはプレドニンの内服で炎症の軽い状態にもっていくことができます(漸減投与の段階で炎症が強くなるケースがあるので慎重な診療が必要です)。

プレドニンの内服で症状がよくならない場合は、免疫抑制剤や白血除去療法、高額な生物学的製剤による治療が必要となります。

潰瘍性大腸炎の治療について(外科的治療)

潰瘍性大腸炎は長期の罹患によって大腸の粘膜にがんが高確率で発生するので、大腸粘膜ごと除去するという考え方があります。多くの場合は内科的治療で症状が改善するのですが、すべての内科的治療で症状が治まらない場合は手術をして大腸を全摘出します。大腸を全摘する理由は主に3つあります。

1) 炎症がひどくなり敗血症になる(またはなる可能性が高い)とき

2) 症状の悪化により仕事の継続が困難となったため、生活の安定を図りたいとき

3) がん、もしくはdysplasia(がんに進行する確立が高い状態)が生じたとき

上記1)の場合は中毒性巨大結腸症を発症している場合が多く、臨時手術となります。通常であれば 2)と3)は待機手術で行われます。

待機手術は通常2回に分けて行います。大腸がなくなると便を溜めておけないので、まずは回腸嚢(小腸の端を折り返して袋を作り便を溜める機能を持たせたもの)をつくり、この回腸嚢と肛門を繋げて肛門から排便できるようにする手術をし、回腸嚢と肛門の繋ぎ目が落ち着くまで便を通さないために、一時的に人工肛門をつくります。その後、回腸嚢と肛門が完全に繋がったら2回目の手術をして人工肛門を閉じます。

潰瘍性大腸炎の大腸全摘術は術後の管理が難しく術後の障害についての深い知識が必要なのに、外科医としてこの手術を経験することが少ないのが実情です。大腸を摘出すること自体はそう難しくはないのですが、回腸嚢のつくり方、肛門とのつなぎ方は経験がないとうまくできません。

また、術後に回腸嚢が炎症を起こしたり、人工肛門(ストーマ)に皮膚障害が出たりと術後のケアに神経を使います。術後に患者さんが生活する上で大変なのが排便障害です。肛門から排便できることになるのはいいのですが、便が液状であり、かつ便意を感じないので下腹部がふくれてくる感じをつかまないと失禁してしまうことがあります。これになかなか慣れなくて人工肛門の方が楽だったいう人もいます。

このように様々な術後の症状、障害に対処しなければならないので、潰瘍性大腸炎の手術を定期的に行っていてノウハウが蓄積されている施設で手術を受けたほうがよいと考えます。

治療の継続について

先にお話しした通り、潰瘍性大腸炎は症状をコントロールしながら長く付き合う病気です。普段の生活に支障が出ないようにするためには継続した治療が大切です。

服薬により症状が治まってくると、薬を飲むのを止めたり、クリニックに来なくなる患者さんがいます。また症状が悪化しているにも関わらず真剣に治療に取り組まない患者さんもいます。こういった患者さんは、他院で潰瘍性大腸炎の診断を受けて、引っ越しなどで私のクリニックに通うようになった方の中にまれに見られるので、最初の診断の際に治療の継続の重要性についてあまり説明されていなかったのかな、と思います。

通院には時間もお金もかかるので後回しにしたくなるのかもしれませんが、普通に活動できるように症状を抑えたいのならばきちんと薬は飲んで、定期的に検査を受けてください(潰瘍性大腸炎と診断された方は難病法に基づく医療費助成についてもご説明いたします)。

私が大腸内視鏡検査をして潰瘍性大腸炎と診断をした患者さんには、診療をきちんと継続し、薬もちゃんと飲むように指導しています。かなりしつこく言うためか内服治療を軽んじる患者さんはめったにいません。私はクリニックで診療をしっかりと行いますが、患者さんの横に365日ぴったりとくっついて無理やり薬を飲ませることはできません。

病気は医師と患者さんが協力し合いながら治していくものです。生活する上で色々と優先したいことはあるかもしれませんが、どうかご自身の体を健やかに保つことを最優先にしていただきたいものです。

腹部に違和感のある方は大腸内視鏡検査を受けましょう

腹部に違和感があったり、軟便が続いている、便に血が混じるという方は大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。毎日快腸快便!だったとしても、30歳くらいになると案外ポリープなどが見つかるものです。ポリープも放置するとがん化する可能性がありますから、サイズや状態など経過を観察したり、内視鏡検査のついでに切除しておくと安心に繋がります。

当クリニックではカメラを入れる際の痛みや違和感を少なくするために技術を磨き、鎮静剤を用いた検査も可能です。どうぞお気軽にご相談ください。

 

この記事を書いた人

近間 威彦
近間 威彦
ちかま たけひこ

さっぽろ駅前内科・内視鏡クリニック院長。内視鏡による胃や大腸の検査・治療を得意とし、これまで携わってきた長年の診療経験から、大腸がんが原因で亡くなる方を減らしたいと常日頃から技術の向上と情報発信に努めている。

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