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大腸がんで死なないために大腸内視鏡検査を

大腸がんで死なないために大腸内視鏡検査を
投稿日
2023.05.12
更新日
2024.08.19

大腸がんは切除の際に取り残しがなければ根治しやすいがんです。

大腸がんの検査システムも整っており、保険制度の適用により検査費用の負担も抑えられます。

早期のがんであれば体の負担が少ない内視鏡による切除も可能です。

それにも関わらず大腸がんで亡くなる人は年々増え続けています。

私はこのことに納得がいかないと常々感じています。

 

早期に大腸がんが見つかって治る人

大腸がんが早期の段階で発見され根治したケースとして多いのは、会社の検診の便潜血検査陽性がきっかけで精密検査を受けて、という流れです。

便潜血検査は微量の血液であっても反応するので、目で見てわかる血便が出たわけでもないけれど陽性になり「精密検査をした方がいいと言われたので」と素直に受診されて発見されるのです。

早期の大腸がんは痛みもないので本人に自覚症状はありません。

内視鏡検査時にポリープが見つかって切除し、その後の生検の結果でがんであるとわかる場合もあります。

患者さんの中には、1年目の便潜血検査の陽性は「お腹も痛くないし、たぶん痔だろう」と無視したけれど、2年目にも陽性になり、さすがに心配になって受診したという人もいます。

がんは常に出血しているわけではないので、1回目に陽性でも2回目には陰性となる可能性もありますから、陽性反応が2回続けて出て本人が受診する気になったのはラッキーだといえるでしょう。

がんだとわかったときは皆さん動揺されますが、がんを取り切れる確率が高く、すぐ死ぬような状態ではないとわかると「早めに検査を受けてよかった!」ということになります。

その他、早期の大腸がんが見つかるケースとしては、腸の別の病気で定期的な検査をしたとき、胃のついでに腸も検査しようと思ったとき、人間ドックで体まるごとの検査を行ったときに大腸がんが見つかることもあります。

 

自覚症状が出てから来院する人

目で見てわかる血便が出たり、腹部に痛みや膨満感があったり、便の出が異常(便が細い、出してもまだ残っている感じがする)、食欲がない、貧血ぎみである等の理由で来院されて大腸がんが見つかる人もいます。

がんが大きくなり腸閉塞などを起こして救急車で搬送されたという人もいます。

大腸がんは自覚症状がある状態だとがんが進行している可能性が高く、多臓器やリンパへの転移も見られるようになります。

そうなってしまうと手術や治療が大掛かりになり根治が難しくなります。

会社の検診で精密検査を勧められても無視する人もおり、札幌市では検診による便潜血検査で陽性となった患者さんでも、47.9%しか精密検査を受けていません。

個人事業主などでそもそも定期的な検診を受けていないという人もいます。

大腸がんにかかりやすくなる年齢が40代頃からなので、働き盛りで時間がないということもあるのでしょう。

ちょっとした不調や体の違和感に気づく余裕がなかったり、そのうち治るだろうと楽観視しすぎる人は注意です。

 

大腸がんは予防できないけれど、大腸がんによる死は避けられる

大腸がんになる要因としてよく言われる、食生活の欧米化、飲酒・喫煙習慣、運動不足、ストレスですが、これらを改善したとしてもがんになる人はなります。

ヒトの細胞は日々生まれ変わり、細胞内にある遺伝子もコピーされるのですが、ときにコピーミスが生まれ増殖する異常な細胞になることがあります。

これががん細胞の始まりです。免疫細胞ががん化した細胞を排除する働きをしてくれるものの、抑制しきれないがんが成長してしまうと目で見てわかる「がん」となります。

年を重ねるごとにがんが生まれる確率が上がるので、高齢化社会になるがんに罹る人の割合も増えるというわけです。

大腸がんは早期に発見しやすいがんです。

膵がんや胆管がんなどと異なり、大腸内視鏡検査さえ受ければ見つけることができるからです。

がんになる前のポリープの段階で切除できれば罹患率を下げられますし、早期がんの段階で取り切れれば死亡率も下げられます。

まれに若年者が発症したり進行が早いがんもあるので死亡者をゼロにするのは難しいとは思いますが、少なくとも結核の死亡者1844人(2021年)よりは減らせるのではと考えています。

 

アメリカでは年々減少の大腸がん死亡率。日本では増加傾向

日本において大腸がんは男女ともに罹患率、死亡率が1ないし2位を占めています。

かつて欧米型のがんと言われた大腸がんですが、アメリカでは大腸がんの死亡率は年々減少していることをご存知でしょうか。

アメリカでは、公的な保険制度は高齢者と一部の低所得者に限り適用され、それ以外の人は民間医療保険を利用するのが一般的です。

2010年にオバマ政権によって保険への加入が義務化されたものの未だ無保険の人も少なくありません。

アメリカでは大腸がんで手術となると数百万円~数千万円という高額になることから、治療費よりも安く済む大腸内視鏡検査を積極的に受けるといいます。

日本も国民皆保険制度により大腸内視鏡検査は6000円ほどで受けられるのですが、大腸がんの手術を受けたとしても高額医療の適応による払い戻しで結果的に医療費が数万円~数十万円で済んでしまいます。

がんになったら破産するかもというアメリカとは事情が違うのも、日本人が積極性に検査を受けない理由なのかもしれません。

 

3~5年ごとに大腸内視鏡検査を受けてほしい

首都圏・大阪・兵庫・博多では大腸内視鏡検査を受ける人が多いのですが、札幌ではかなり少ないです。

これは日々診療している中でも実感しています。

受診のためにわざわざクリニックに来てくれたのに大腸カメラを入れる検査には拒否の姿勢を貫く患者さんもおり、大腸がんを撲滅したい私としては非常に歯がゆい思いをしています。

大腸がんで死なないためには、40歳くらいからは症状が何もなくても3~5年ごとには検査を受けていただきたいです。

皆さんが大腸内視鏡検査を受けたがらないのは、医師の方にも問題があるのかもしれません。

私が行う内視鏡検査では痛がらない患者さんの中にも、過去にカメラ操作が下手な医師に当たり辛かったという人がいるからです。

痛みへの配慮がない検査でも病気を見つけるという目的は達成できるので、検査数が多い病院でもそういったことは起こります。

最近は内視鏡の性能も前処置の下剤も進歩しているので苦痛のない検査はできるはずです。

私はそのために挿入法の研鑽と新技術の開発に励み、また後輩育成を頑張っています。医師の技術が向上すれば、大腸内視鏡検査はもっと気軽に受けてもらえるものになり、大腸がんで亡くなる人が減らせると思っています。

 

自分のからだのことはネットで調べてもわからない

一般的な病気や検査のことについて知りたいとき、インターネットはとても便利です。

様々な専門医や病気の経験者のお話を読むことができます。

しかし「自分がいま健康かどうか」については、結局のところ本人のからだを検査しないとわかりません。

人は見たいものを見て知りたい情報を集める傾向があるので、自分が「病気になっていなければいいな、病院に行きたくないな」と思えばそのような情報を見つけて安心します。

「検診で便潜血陽性が出たけど気にしすぎだよね?」「不調はあるけどがんではないよね?」と思いたいがためにインターネットで情報を探すのです。

または病院に行く背中を押してもらうために「病気かもしれない」情報を探します。

そのような情報を探すということは、すでにご自身の健康に不安を感じているのではないですか。

自分の健康への不安を解消するためにはすぐに検査を受けるのが一番の近道です。

もやもやしながら何時間もネットで検索し続ける時間がもったいないですよね。

その時間は検査を受けられる施設を探すのと検査のために使いましょう。

平日に仕事を休めない場合でも当院のように土日で検査している施設であれば受けられます。

どのみち検査は2週間~1カ月ほど先の日程で予約することが多いので予定も合わせやすいと思います。

検査の予約をしたらあとは受けるだけですので、不安はちょっと置いておいて日々やるべきこと、やりたいことに注力しましょう。

 

 

 

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この記事を書いた人

近間 威彦
近間 威彦
ちかま たけひこ

さっぽろ駅前内科・内視鏡クリニック院長。内視鏡による胃や大腸の検査・治療を得意とし、これまで携わってきた長年の診療経験から、大腸がんが原因で亡くなる方を減らしたいと常日頃から技術の向上と情報発信に努めている。

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