大腸ポリープとがんの関係
- 投稿日
- 2023.06.28
- 更新日
- 2024.08.19
大腸内視鏡検査でカメラを入れると、患者さんの腸管の粘膜にポリープを見つけることがあります。サイズが小さければ(事前に患者さんが希望されていればですが)その場で切除してしまいます。
大腸内視鏡検査をしてポリープが見つかったことのある人は、カメラの映像や画像でポリープがどういうものなのか、なぜ切るのかも説明されたことがあるでしょう。でも経験のない人は不安に感じるかもしれません。
今回は大腸ポリープと大腸がんの関係、ポリープの切除方法等についてご説明します。
大腸ポリープって何?
腸管の粘膜から立ち上げる隆起性の病変が「ポリープ」です。簡単にいうと腸粘膜のできものですね。大腸ポリープは腫瘍性のものもと非腫瘍性のものがあり、腫瘍性の中で悪性のものを「がん」、良性のものを「腺腫」と呼びます。ただの腺腫でも年数を経るとがん化することがわかっているため、良性でも見つかったら取ってしまいましょう、という理屈です。
なお、非腫瘍性のポリープ(過形成ポリープや炎症性ポリープなど)はガン化のリスクは低いので経過観察となることが多いのですが、サイズによっては高リスクと判断し切除をすることがあります。大腸内視鏡検査でポリープが見つかっても、それが大腸がんである確率は体感的にはごく少数です(見た目は良性に見えても、病理検査に回したら一部ががん化していたというケースはあります)。5mm未満のポリープなどごく小さい場合はヒダに隠れてカメラでも見えないことがありますが、腸は動いているので、次回に行った内視鏡検査のときに見える角度になって発見されたりもします。定期的な検査の重要性を感じる場面です。
大腸ポリープの自覚症状
「大腸にできものができたら痛そう」と思うかもしれませんが、大腸の粘膜には痛みを感じる神経がないので、ポリープができてもほとんどの場合は自覚症状がありません。これは大腸がんにも言えることです。症状が出るとしたら便がポリープにこすれることによる出血(便潜血検査陽性or 目視)か、ポリープが大きくなったことによる便秘・腸閉塞でしょう。似たような痔の症状と重なった場合はより気づきにくいようです。便に血が混ざる、原因不明の便秘が続くのは異常なのですから速やかに受診・検査を行ってください。
ポリープを予防するためには?
大腸ポリープができる原因が明確にわかっていないため、大腸ポリープの形成を予防する方法は今のところありません。一般的に大腸がんと同じく40代くらいから年を重ねるごとに増えていきますが、20代でも1cm以上のポリープが見つかることもあるので、若いから絶対にないというわけでもないですね。ポリープもがんもその原因として、食べ物がよくないとかストレスがよくないとか様々な説がありますが、だからといって美味しい食べ物を我慢しすぎると人生が楽しくないですし、今すぐ仕事を辞めてストレスフリーに!というわけにもいかないでしょう。ポリープがあってもがん化しなければ健康に問題はないのですから、なるべく早く見つけて取り切ればよいのです。
遺伝的に腺腫性ポリープができやすい人
大腸ポリープができやすい年代について先にお話ししましたが、若いときから大腸に腺腫性ポリープができて、年齢と共にどんどん増えていくという「家族性大腸腺腫症(FAP)」という病気があります。これは生まれつきAPC遺伝子がうまく働かない変異があるために起こることが多く、両親のどちらかがこの病気の場合は、5割の確率で子どもに遺伝します。10歳頃から大腸ポリープが発生し、放っておくと年齢と共に数が増えて40代までには約半数の人が、60代になるとほぼ全ての人が大腸がんになると言われています。遺伝の可能性がある人は若いうちから大腸内視鏡検査を受けてポリープの状態を確認し、大腸がんになる前に大腸切除手術を受けるなど定期的な観察と適切な治療が必要です。
大腸ポリープ切除手術について
ポリープの切除はほとんどの場合内視鏡治療のみで完了します。ポリープの形や大きさにより以下の方法を使い分けます。
1) ポリペクトミー
1cm前後のポリープであればこちらで切除します。内視鏡の先端から出る金属の輪(スネア)をポリープに引っ掛けて締め、電流を流して焼き切ります(通電せずに締め付けだけで切除するコールドポリペクトミーもあります)。10分くらいで終わり痛みもありません。大腸内視鏡検査と一緒に行うことができますし、外来のみで治療が終わるので最も負担が少ないでしょう。ただし、ちゃんとした手術なので術後は安静に。飲酒や刺激の強い食べ物も1週間ほどは控えます。術後は痛みもないので普段を同じように運動をして長風呂のあと飲酒などしていると、切ったところから出血して止血のための手術をしなければならないこともあります。日帰り手術でも自宅療養期間が続いていると思いながら体を大切にしてください。
2) 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
平坦なタイプのポリープで大きさが2cm未満の場合に用いられる切除術です。スネアを引っ掛けて焼き切る方法は同じなのですが、その前にポリープの下に生理食塩水や薬剤を注入して、ポリープが浮き上がる状態にしてから引っ掛けて切ります。術後に出血などのリスクがあるときは入院(1泊2日)していただく場合があります。
3) 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
EMRでは難しい大きなポリープなどはESDを行います。ポリープの下に薬液を注入して浮き上げ、内視鏡の先にある電気メスで切除します。スネアで絞り切るのとは違うため、切り取った部分から出血したり、穴が開いた状態になった場合は内視鏡の操作で止血します。ESDの場合は最長一週間くらいの入院が必要です。
内視鏡的に切除できるかはサイズだけでなくポリープの形状などにもよりますので、主治医とよく相談してください。
また、民間の医療保険では大腸ポリープ切除も保障の範囲内である場合があります。治療費負担を軽減できるかもしれないので、保険をかけている人は確認しましょう。
大腸ポリープにがんが見つかった場合
病理検査の結果、切除したポリープにがんが見つかることがあります。そうなると、がんの種類や性質、がんの進行度合い、取り残しがないか、転移の可能性などを新たに考えなくてはいけません。腸管の内側の粘膜内に留まっているようであればリンパ節への転移の可能性は低く、内視鏡的切除で治療が完了しますが、粘膜の外側の粘膜下層に達していたら転移の可能性を考えて治療方針を決定します。その場合は外科手術が検討される場合があります。
切除不要なポリープは切らない判断も
ポリープを切る話ばかりしてきたので「この医者はただ切りたいだけなのでは?」「点数稼ぎでは?」と思われそうですが、私は切除不要なポリープであれば切らなくていいと考えています。大腸の腺腫は良性であっても、いずれがん化する可能性が極めて高いので早期の切除を勧めていますが、例えば胃の良性ポリープなどはがんであるケースはまれで、経過観察はするものの見つけてすぐに切ったりはしません。内視鏡を使った短時間の手術であっても出血などのリスクはあります。患者さんの体や金銭的な負担をかけてまで切る必要はないでしょう。
ただし、経過観察というのは自覚症状がなければ何年も放置していいという意味ではありません。ポリープが見つかった人は時間が経つとまたできる傾向にありますし、ポリープを経ずにいきなりがんが発生することもあります。大腸がんを予防するためにも1年に1度は内視鏡検査を受けていただきたいと思います。
まずはお気軽にご相談ください。
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