大腸がんの原因は食生活やストレス? 女性に多いって本当? 生きるために内視鏡検査で早期発見しよう
- 投稿日
- 2023.02.17
- 更新日
- 2023.02.17
「大腸がん撲滅のために内視鏡検査に注力しています」と言うと、「大腸がんの原因って何?」「どうしたら大腸がんにならないの?」などと尋ねられることがあります。正直に申しますと、がん研究が進んでいる現代においても「大腸がんになる原因はこれだ!」と特定できるほどには至っていませんし、基本的には誰がいつ罹ってもおかしくない病気です。
ただ、大腸がんは生活習慣と関わりがあり「がんリスクが高まる」と言われていることはいくつかありますので、今回はそのお話をしましょう。
「大腸がんの原因って食生活?」それだけではありません
①喫煙
まずは確実に影響があると言われているところから。大腸がんに限ったことではないですが、日本人を対象とした研究結果からたばこは多くのがんに関連することがわかっています(たばこの箱にも健康上の警告がしっかりと書かれていますよね)。喫煙者は非喫煙者に比べて約1.5倍のがんリスクがあるといわれており、日本のがん死亡の約20%~27%は喫煙が原因であると試算されています。
自身が喫煙者でなくとも、そばにいる他人の喫煙による受動喫煙もこれに含まれるので注意が必要です。
②過度な飲酒
過度な飲酒とがん罹患が関連するという研究結果がありますので、お酒を楽しみたい方は節度を守って飲みましょう。目安は1日あたり約23g(アルコール換算)程度。日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら2/3合、ウイスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならグラス2杯程度が上限です。
いわゆる「飲める人」でこれくらいですから、お酒が苦手な方は無理に飲まないでくださいね。
③食生活
喫煙・飲酒ほどのリスクではありませんが、食事の内容も大腸がんとの因果関係があるようです。全世界地域の人を対象とした研究では、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉は発がん性あり、牛・豚・羊などの赤肉はおそらく発がん性ありと判定されています。ただし、日本人は世界的にみてもこれらの摂取量は少ないため、平均的な量の摂取(加工肉13g・赤肉50g/日)であれば影響もそれほど大きくないと考えます。
肉はほどほどに、繊維質が豊富な野菜も日々の食卓に取り入れてバランスのよい食事を心がけましょう。
また塩分の摂り過ぎはがんリスクの他に脳卒中や心臓病のリスクも上がります。日本人は塩分を多めに摂取する傾向があるので、だしを効かせたりレモンや酢で酸味をつけるなど塩や醤油だけに頼らない味付けを工夫しましょう。
④運動不足
仕事や運動で身体活動量が高くなるとがん全体の発生リスクは低くなるようです。コロナ禍において自宅で過ごす時間が増え、運動不足になっている方も多いと思います。
理想としては歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日1時間程度、息がはずみ汗ばむ程度の運動を週に1時間程度行うのがよいとされていますが、まったく運動をしていない方はまず座りっぱなしを避けて、ちょっと遠くの店まで徒歩で買い物に行くとか、エレベーターではなく階段を使うとか、床の雑巾がけや風呂掃除を念入りにするなど、日常生活の中でこまめに身体を動かす機会を増やすところから始めてみましょう。
ストレスはがんの原因になるのか
ストレスはさまざまな病気のリスクの要因であると言われています。そのメカニズムは解明されていませんが、日本人でがんにかかっていない40代~60代の約10万人を対象として追跡調査を行い、自覚的ストレスとがん罹患との関連性を調査した結果があります。調査開始時と5年経過時のアンケートにおける回答の組み合わせから、常に自覚的ストレスが「高い」と回答したグループは、「低い」と回答したグループに比べて、全がん罹患リスクが11%上昇していました。
この結果を見るとストレスレベルの高さはがん罹患の原因として何らかの関連がありそうです。
この調査では特に男性においてこの関連が強く見られましたが、常に高いストレスを受けていると回答したのが主に男性であったこと、ストレスレベルが高い男性は飲酒や喫煙量も多く、これらの影響を完全に取り除くことができなかった可能性があることから、性別による関連性は定かではありません。
ストレスとがん罹患との関連性は今後さらに研究が必要でしょう。
女性は大腸がんになりやすい?
女性がかかるがんで多いのは「乳がん」ですが、女性のがん死亡原因の第一位は大腸がんです。ただし男性のがん死亡原因の第一位は「肺がん」、次いで「大腸がん」ですから、男女関係なく大腸がんで亡くなる人は多いと言えます。
女性は便秘ぎみの人も少なくないので腸内環境が崩れやすいというのはあるかもしれませんが、女性関連要因と大腸がんとの関連についてはまだ解明されておらず、今までの診療の経験からも特に女性に大腸がんが多いと感じることもありません。
それよりも私としては、早期発見で治せるはずの大腸がんで男女ともこんなにも死亡率が高いことのほうが気になります。便が出にくかったりお腹が張るのは便秘のせい、便に血が混じるのは痔のせいと思い込み、違和感を無視していたら、実は腸の中でがんが大きくなっていて…というケースをよく見ます。
「もっと早く内視鏡検査を受けていたら」と後悔する患者さんをこれ以上増やしたくありません。年1回の健康診断と同じくらいの感覚で大腸内視鏡検査を受けていただきたいと思います。
もっと気軽に大腸がん検査を。大腸内視鏡検査の流れ
大腸内視鏡検査の検査手順は施設によって異なりますが、だいたいは以下のような流れで行います。
① 検査前日
大腸内視鏡検査において皆さんにお願いしたいことは、腸の中をすっかりきれいにしていただくことです。腸の中に便が残っている状態だとカメラを入れても見えにくく、せっかくの検査なのに病気が発見できないかもしれません。検査3~4日前くらいから繊維の多い食物はなるべく避けて、検査前日の夕食は21時頃までに脂肪が少なく消化によいものをとり、就寝前に下剤を内服します。(夕食後は水、お茶などは飲んでも構いません。果肉や繊維質の入ったジュースはNGです)。
なお、私のクリニックでは江崎グリコさんの「エニマクリン」という大腸検査食を用意しています。この検査食は、レトルトパウチに入った煮込みハンバーグと白がゆ(夕食を想定)、ビスコとゼリー(朝・昼食を想定)がセットになっています。
食べた後に残渣(便)が残りにくく工夫されていて、消化によいわりに味も見た目も満足感のある検査食なので「雑炊だけ」「うどんだけ」よりいいという患者さんもいます。
② 検査当日
起床後に下剤を内服します。午前検査の場合は絶食、午後検査の場合は検査の5時間前には朝食を食べ終えます(ビスコとゼリーは職場でも食べやすいので便利です)。
検査の4時間前から腸管洗浄液を飲み始めます。腸管洗浄液の種類はクリニックによって様々ですが、目的は共通していて腸内をキレイにすることです。洗浄液を飲んで便を押し流して10回ほど排便し「水以外何も出ない」ぐらいの状態になったら検査可能です。「こんなにトイレに行ったのだからもういいだろう」と、まだ早い段階で来院される方もいますが、腸内が理想的な状態になるまで引き続きクリニックのトイレで頑張ってもらわなければならないので、できるだけ自宅で出し切ってから来ていただくのが望ましいです。便秘体質の方は便を出し切るのに時間がかかるので、検査前の3日間ほど便が出やすくなる薬を服用していただくこともあります。
なお、内視鏡検査の際に鎮静剤の使用を希望される場合は、検査後に運転ができませんので、車・バイク等ではなく公共交通機関を使いましょう。自分のクリニックの場所をJR札幌駅近くに決めたのは、このことを想定したからというのが大きな理由です。
③検査
検査の際にはお尻の部分に切れ目がある検査着に着替えていただきます。お尻をまるっと出さなくていいので恥ずかしがらずに検査台に横になってください。内視鏡カメラの操作が上手な医師であれば痛みや苦痛を感じることは少ないはず。検査中に患者さんがやることは特にないのですが、肛門から内視鏡カメラを挿入するときに緊張で身体に力が入る人もいますので、力を抜いて楽に検査を受けていただきたいです。医師がカメラで腸内を観察する際、切除可能なポリープがあればその場で切除します。
鎮静剤を用いた場合は眠ってしまうので「気づいたら終わっていた」と言う方がほとんどです。
④検査後
検査後は数十分ほど休みます(鎮静剤を用いた方は回復室で1~2時間ほど休んでいただきます)。
その後、撮影した画像を見ながら検査結果についてご説明しますので、わからないことや気になる症状があったら医師に尋ねましょう。
検査の流れがイメージできたでしょうか。当クリニックは痛みが少なく丁寧な内視鏡検査を心掛けています。「検査に不安があり足が遠のいてしまっている」という方はぜひお気軽にご相談ください。
まずはお気軽にご相談ください。
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