大腸内視鏡検査は医師が下手だと激痛? 検査の苦痛が少ない病院の選び方
- 投稿日
- 2023.04.12
- 更新日
- 2023.07.21
日本人の死因で最も多い病気は「がん」です。そのうち、大腸がんは臓器別の死亡者数で上位に入ります。
私は大腸がんの早期発見のためには、自覚症状がないうちから大腸内視鏡検査を受けていただくことが重要だと啓蒙しています。
でも「今はどこも痛くないから」「仕事や子育てが忙しいから」などという理由で、大腸がんになりやすい世代であっても一度も検査を受けたことがない人が珍しくありません。
確かに検査には時間や費用がかかりますが、それ以外に「大腸内視鏡検査は痛いので受けたくない」と思っている人も多いようです。
大腸内視鏡検査と痛みについて
大腸内視鏡検査は小型のカメラがついた管を肛門から大腸に挿入して、引き抜きながら映像で腸壁を観察して異常がないか調べる検査です。
特にカメラを大腸の奥まで入れるときに痛くて苦しかったという方もいるでしょう。
過去に大腸内視鏡検査を受けて「激痛だったからもうやりたくない」と思ったり、痛い検査を受けた諸先輩方の話を聞いて検査に後ろ向きな方もいるようです。
そういう体験談を聞く度に私は「ああ、下手な医師に当たってしまったんだろうな」と気の毒になります。
大腸内視鏡検査は、医師個人のカメラ挿入技術によって痛みの度合いがかなり違うからです。
痛みが起こる原因
ぐにゃぐにゃと固定されていない大腸の中でカメラを操作して進めていくので、このときに腸壁に強くぶつかったり、通過する際に腸が引っ張られたりすると痛みを感じやすいのです(引き抜く際に痛みを感じることはほぼありません)。
人の腸の形状は様々であり、あらゆる患者さんに痛みを感じさせない検査をするためには、多くの経験と内視鏡を進める方向や力加減などの熟練の手技が必要です。
ただし、大腸内視鏡検査のプロフェッショナルに検査をしてもらっても痛みを感じてしまう場合もあります。
小柄で痩せ型の人は特に、狭いところに腸が折りたたまれている状態になるため腸に急角度の曲がりができますし、過去に腹部の手術をされた人は腸に癒着が起こることがあり内視鏡が通りにくくなります。
このような患者さんの場合は普通の腸の人よりも慎重に内視鏡を進める必要があります。
たまに他院で内視鏡検査を受けたことがある患者さんが私のクリニックを受診し、検査の前に「私の腸は難しいらしいんです…」と自己申告されることがあります。
以前の検査で痛い思いをされたのか、覚悟を決めたかのような緊張の面持ちで検査に挑む人もいます。
そういうときはなおのこと「痛みが少ないようにしてあげたい」という思いで神経を研ぎ澄ませて検査を行います。
検査後に「思ったより平気でした!」とほっとした顔で言われるとこちらも嬉しくなります。
クリニックの選び方について
「大腸内視鏡検査をするなら痛くないクリニックを選びたい」と誰もが思いますが、初診の際に一般に公開されている情報から自力で理想のクリニックを探すのは難しいだろうと感じます。
身近で検査を受けた人を探して感想を聞いたりすると参考になるかな…という程度で、それでも腸の状態も痛みの感じ方も人それぞれのため、ご自身が受けるときに絶対痛くないという保証はありません。
とはいえ誰が書いているかわからないインターネット上の口コミよりはまだ信頼できるのではないでしょうか。
使用している検査の設備(内視鏡の種類)によっても痛みの大きさに影響が出るかもしれませんが、最新の内視鏡を使っていたとしても技術が伴わなければあまり意味がないと考えます。
痛みを感じない方法として、鎮静剤で眠っているうちに終わらせてもらうという選択肢もあります。
この場合は鎮静剤使用の検査を行っているクリニックを探しましょう。
ただし検査後は目が覚めるまで休んでもらわなければならず、自分では目が覚めているつもりでも注意力がかなり低下しますから、車やバイクの運転はできません。
時間に余裕があり公共交通機関で移動が可能な方(またはご家族などが迎えに来られる方)限定の方法になります。
そして眠っている間に検査されるので、検査をした医師が上手かったのか下手だったのかもわからないのはやや不安かもしれませんね。
意識がある状態で検査を受けたいという人は、まずそのクリニックが「痛みのない検査を目指しているか」をクリニックのHPや医師のブログなどでチェックしましょう。
皆さんは意外に思うかもしれませんが、そもそも「検査は痛いのが当たり前」と思っている医師も少なくないのです。
なぜなら検査の目的は病気の有無を調べることであって、痛みをなくすというのはサービスの領域だから。
以前、知り合いの医師の大腸内視鏡検査を私が担当したのですが、その際に「痛みを感じさせない大腸内視鏡検査の技術が存在するんだ!」と驚かれました。
彼は消化器担当ではなかったとはいえ、長く医師をやっている人間でもそのような認識です。
大腸内視鏡検査の実績が豊富でも医師が気を遣っていなければ患者さんが痛みを感じる確率は上がります。
逆に、痛みのない検査を目指していても医師の技術が乏しければこれもまた痛い検査になる可能性が高くなるでしょう。
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「痛みのない大腸内視鏡検査」当院での対策
私も痛みを感じない大腸内視鏡検査を目指している医師の一人です。
もちろん希望される方には鎮静剤有りの内視鏡検査にも対応していますし、意識がある状態であっても、なるべく痛みがないように内視鏡を操作しながら挿入します。
そして引き抜く際にも病気の兆候を見逃さないように集中してくまなくチェックします。
腸は色々ですから、どの人にも当てはまる正解のルートというものは存在しません。
ただし自分の場合は20年以上の経験から「こうすると痛い」というやり方を知っているので、それを避けるように注意を払って検査を行います。
OKルートを進むというよりはNGルートを避ける。
イメージとしては、版画の絵のように不要な箇所を削っていった結果、一枚の版画板が完成するようなものでしょうか。
検査を受ける方の腸の難易度や痛みの感じ度合いにもよりますが、概ね皆さんに満足していただけていると自負しています。
また、今までのやり方だけにとらわれず、もっとよい方法はないか常に模索し続けることも大事でしょう。
私は「二木会」という大腸内視鏡挿入法を勉強する会に属しており、大腸内視鏡挿入法の作成や改良・技術の向上・質の高い大腸内視鏡の普及に努めています。
そこでは同じ志を持つ医師たちが集まり、定期的に行われる勉強会で大腸内視鏡検査の挿入動画を見ながら意見交換をします。
他者が行った検査事例や技術を知ることで知見が増え、技術向上に繋がります。
経験が浅い医師の場合、動画を見るだけでは実際の内視鏡操作の感覚をつかめないので、経験豊富な医師がマンツーマンで操作の技術を教えることもあります。
多くの人に大腸内視鏡を気軽に受けてもらうためには、検査ができる人間を増やすだけでなく、痛みのない検査ができる高い技術を持った医師を増やす必要があると考えています。
大腸内視鏡検査で大腸がんを早期発見しよう
「大腸内視鏡は痛くて当たり前だから我慢する」のはもう時代遅れです。
病気を見つけるための検査で苦痛を感じてしまうと、どうしても足が遠のきます。
現在何も症状を感じず、どこも痛くないならなおさらです。
検査を怖がったばかりに初期のがんを見つけることができず、症状が出てからしぶしぶ検査をしたら腸の中でがんが進行していて治療の選択肢も少なく余命わずか、という悲しいケースは撲滅しなければなりません。大腸がんが増え始める40代頃に今まで一度も大腸内視鏡検査を受けたことがないという方は、一度は必ず検査を受けてください。
今まで健康体だったからといって、これからも健康でいられるとは限りません。
身近な人ががんで亡くなったときや、ニュースで有名人の訃報を見たときに、不安を感じつつも「自分はきっと大丈夫」と思い込もうとしていませんか?
そういうときこそ自分の健康を改めて考えるサインだと思って、その気持ちを忘れないうちにクリニックを訪れ、大腸内視鏡検査の予約を入れることをおすすめします。
まずはお気軽にご相談ください。
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