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部位別のがん罹患数と死亡数-大腸がんが減らない謎

部位別のがん罹患数と死亡数-大腸がんが減らない謎
投稿日
2023.07.12
更新日
2024.08.19

がん(悪性新生物)は日本人の死因第1位の病気です。

細胞が分裂する際に突然変異が起こることでがんが発生するため、長生きする(細胞分裂を繰り返す)ほどがんになる確率は上がります。日本は長寿国ですから、がんにかかる世代の人口が多いというのも理由の一つでしょう。

がんは全身どこにでも発生しますが、罹患率と死亡数は各部位により違いがあります。

 

体の部位別のがん罹患数と死亡数

国立がんセンターが公表しているデータにおいて、日本のがん罹患数の推計値(2022 年)は、約 101 万 9 千例(男性 58 万 4 千例、女性 43 万 4 千 900 例)あり、男性と女性の部位別の罹患率は下記の通りです。

■男性のがん罹患率

1位 前立腺がん(17%) 2位 胃がん(16%)3位 大腸がん(15%)、4位 肺がん(15%)、5位 肝臓がん(5%)

■女性のがん罹患率

1位 乳がん(22%)、2位 大腸がん(16%)、3位 肺がん(10%)、4位 胃がん(9%)、5位 子宮がん(7%)

 

また、がん死亡数の推計値は、約 38 万 400 人(男性 21 万 9 千 300 人、女性 16 万 1 千 200 人)となっており、こちらも男女別に割合が算出されています。

■男性の死亡数に占める割合

1位 肺がん(24%)、大腸がん(13%)、胃がん(12%)、膵臓がん(9%)、肝臓がん(7%)

■女性の死亡数に占める割合

1位 大腸がん(16%)、2位 肺がん(14%)、3位 膵臓がん(12%)、4位 乳がん(10%)、5位 胃がん(9%)

 

このようなデータを見ると大腸がんというのは、「罹りやすく、死にやすい」という印象でしょう。

大腸がんで亡くなったという有名人の訃報をきいたり、ある程度の年齢になると知人の中でも大腸がんに罹患した人の話が出たりするので、とても身近で怖いがんというイメージを持たれている人も多いと思います。

ただ、私たちのような専門医師にとっては「日本のような医療の先進国で、大腸がんで死ぬ人がこんな

にいるなんておかしい」というのが共通認識なのです。

 

早期に見つかり、適切な治療法も確立されている大腸がん

がんというのは、基本的は早期に見つけて切除しきることができれば死に至ることはありません。

つまり、検査や手術が難しい部位であるほど死亡率が高くなります。

膵臓がん、胆管がんがこれにあたり、早期で見つけることはまず不可能です。肝臓がんも「肝臓に何かありそう」というところまでは事前にわかっても、切り開いて組織を採取しないことには特定することはできません。

しかし大腸がんは検査で早期発見が望める上、内視鏡検査であれば同時に組織を取って生検に回して、がんかどうかを素早く特定し、治癒に向けて適切な治療ができます。定期的に大腸内視鏡検査をしていれば小さいうちに見つけられますし、死に至ることがないはずの病なのです。

 

大腸がんの死亡率を減らすためにお願いしたいこと

「気をつけていても自分はがんになる可能性がある」ことを忘れない

まずお伝えしたいのは、いくら食事や生活習慣に気をつけていたとしても、がんになる可能性はゼロにはならないということです。

今はインターネットで誰もが好きに情報を発信できる時代になったので「がんにならない方法」などと検索すると、体にいい食べ物やサプリ、免疫力を上げる民間療法のススメなど様々な情報がヒットしてしまいます。健康に気を配るのはもちろんよいことですから、禁煙なり運動なりダイエットなりは適度にしていただいてもよいのですが、それでも病気になるときはなるのです。

特にがんの発生率が上がる中年以降は自覚症状がなくても定期的な検査を受け、早期発見の機会を逃さないでください。

 

定期的な健康診断と、要精密検査の場合は大腸内視鏡検査を受ける

初期の大腸がんに関しては自覚症状がない場合が多いので、例えば会社の健康診断の便潜血検査で陽性が出たら、必ず大腸内視鏡検査を受けるようにしてください。

40歳以上の方は特に、不調がなくとも腸の中を内視鏡カメラで見てもらってください。将来がん化するかもしれないポリープの1つや2つ見つかることが多いです。

ちょっとした腸の不調で病院にかかりたいときも早期発見チャンスです。大腸内視鏡検査を行っている医療機関を選び、できるならば念のための内視鏡検査をしてもらってください。不調の原因と関係なくとも早期がんが見つかるかもしれません。

まれに、腸の不調を訴えて来院されているのに、内視鏡検査は受けたくないという患者さんがいます。原因が特定できないため、薬だけほしいと言われてもとても困ります。

何か事情があるのかもしれませんが、医師は嫌がる患者さんに無理やりカメラを入れることはできません。検査に不安があって受けたくないのであれば、不安は解消することができるかもしれないのでその旨をご相談ください。

 

大腸がんの死亡率を減らすために、医師がしなければならないこと

大腸内視鏡検査をもっと気軽に受けてもらうためには、われわれ医師が、患者さんが感じる検査の苦痛を最小限にする努力をしなければならないでしょう。

大腸内視鏡を行う医師全員が痛みのない内視鏡検査をするための技術を習得すべきです。内視鏡の挿入技術で患者さんの痛みや苦痛を減らすことができますし、過去の手術による癒着があるなど難しい腸の形をしている患者さんでも、技術が高ければ深部までカメラを入れられる確率が上がります。

たとえ経験の浅い医師でもカメラを入れさえすれば大腸内を見ることはできるので、検査はできると言っているかもしれません。そして「検査はできるけど、患者さんが辛いだろうからなるべく別の検査を」と、CT検査だけで終わらせることもあるでしょう。患者さんは医師を信頼して診察に来てくれていますから、こちらから内視鏡検査を勧めなければ「しなくても大丈夫なんだ」と思われます。患者さんだって痛くて面倒なことは嫌なので「それでもカメラ入れてください!」という人は珍しいです。これでは初期のがんが見過ごされてしまいますし、患者さんの中にもうっすらと不安が残ったままになってしまいます。

私は大腸がんで亡くなる人をゼロにしたいと真剣に考えています。

しかし、私一人で検査をする数には限りがあるので、私が培った技術を内視鏡検査の経験を積むことが難しい環境にいる医師たちに伝えていくために、内視鏡の挿入手技がわかる動画やブログなども公開しています。

定期的に行われる勉強会でも積極的に技術の共有を行っていますので、大腸内視鏡検査をする全ての医師の方の参考になればと思います。

 

大病の予防として検査を忘れずに

コロナ禍においては、多くの人の中で「なるべく病院のお世話にならないようにする」という意識が広まっていました。がん検診なども含め、今まで定期的に受けていた検査をお休みされていた方も多いようです。

習慣になっていたことを一度お休みすると再開のタイミングを失うことはよくあります。特に会社での集団検診などがない専業主婦やフリーランスの方は、検査の予約をしないでいつの間にか1年経ってしまった、となりがちです。

ここ数年がん検診をお休みされていた方こそ、何かと忙しい年末になる前に健康チェックとして検査の予約を入れてみてはいかがでしょう。

胃腸の内視鏡検査は当院でも予約を随時受け付けていますので、検査の相談や検査予約を希望される方は来院をお待ちしております。

まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

近間 威彦
近間 威彦
ちかま たけひこ

さっぽろ駅前内科・内視鏡クリニック院長。内視鏡による胃や大腸の検査・治療を得意とし、これまで携わってきた長年の診療経験から、大腸がんが原因で亡くなる方を減らしたいと常日頃から技術の向上と情報発信に努めている。

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