胃がんを早期発見。胃内視鏡検査(胃カメラ)の重要性と検査が必要な人について
- 投稿日
- 2024.12.18
- 更新日
- 2024.12.18
胃がんや大腸がんは早期に発見し適切な治療を行えば死に至るようなものではないと考えます。早期発見のためには、定期的な内視鏡検査が最も有効です。
幸い日本は健康保険の制度が手厚いため、職場や行政では定期的な健康診断に対する補助がありますし、異常があれば精密検査を勧められ、精密検査も保険適用で自己負担額が軽減される仕組みです。
海外の人から見れば羨ましがられるような環境なのですが、検査を受けたくないという人も一定数いるのが実情です。検査は時間もかかりますし、胃カメラは苦しそう、というので敬遠されるのであろうなと思いますので、当院ではなるべく苦痛のない検査ができるように心がけております。
しかし、私どもは嫌がる患者さんに無理やり検査をすることはできません。患者さんご自身の意思で受けていただかないといけないので、今回は胃内視鏡検査の重要性についてしっかりとお伝えしたいと思います。
胃内視鏡検査(胃カメラ)でわかる代表的な病気
胃内視鏡検査の正式名称は「上部消化管内視鏡検査」と言い、その名の通り食道・胃・十二指腸の半分くらいまでを内視鏡スコープ(カメラ)で観察する検査です。
この検査では、食道がん、胃がん、十二指腸がんなどの悪性腫瘍を見つける他、胃炎や逆流性食道炎などの炎症、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃ポリープ、ピロリ菌感染などの病気を見つけることができます。
国が推奨しているがん検査は、この内視鏡検査とX線検査(バリウム検査)なので、どちらかを選択することになりますが、病気を見つける精度としては鮮明な画像で胃の中を直接観察できる内視鏡検査が圧倒的に上なのは明らかでしょう。
口からカメラを入れるのが苦しいので内視鏡検査を避けてきた人もいるようですが、最近は口よりも苦しさが軽減される鼻からの検査や、鎮静剤を利用できる施設も増えているので、昔よりも気軽に内視鏡検査を選択する方が多くなっているようです。
胃内視鏡検査を受けた方がよい人
世の中には我慢強い人、忙しくて時間のない人がいるようで「検査してもらったほうがいいんだろうな」と思いつつも後回しにしている人も少なくありません。
まず早急に来院してもらいたいのは、自覚症状がある人です。胃痛や胸やけ、最近食欲が落ちた、食べると吐き気がする、喉や胸がつかえている感じがする、便が黒っぽくなった、などという症状がある場合は、日常生活に影響が出ているでしょうから1日でも早く検査と治療をするべきでしょう。
次に、なるべく早く検査をしていただきたいのは、健康診断で異常が認められた場合。自覚症状がないのでつい検査の予約を忘れてしまいがちですが、万が一がんなどの重大な病気を抱えている場合は手遅れになるといけませんので、これを読んでいて思い出した人はすぐに受診と検査の予約をお取りください。
加えて、早急ではないですが検査を受けていただきたいのは、40歳以上で一度も内視鏡検査を受けたことがない方。そして自営業などで定期的な健康診断を受けてない方です。
がんは高齢になると発生しやすくなり、初期のがんでは自覚症状はほぼありません。健康に自信のある人ほど通院や検査をしない傾向にありますから、中年以降はご自身の健康チェックの意味を含めて一度内視鏡検査を受けていただきたいですね。
早期で見つかりにくいスキルス胃がん
皆さんは「スキルス胃がん」をご存じでしょうか? 有名人の訃報などで病名を聞いたことがある人もいるでしょう。
進行が早いがんとして認識されているかもしれませんが、実際は違っていて、検査で見つかりにくいため、見つかったときには手遅れというケースが多いということなのです。
「スキルス」とはギリシャ語で「skirrhos(硬い腫瘍)」という意味です。普通の胃がんは胃壁の表面の病変を見つけやすいのですが、スキルス胃がんは胃壁の表面に変化がなく、粘膜の下が硬くなっていくため内視鏡検査でも見つかりにくいのです。
早期では自覚症状がないので、胃が痛いとか、食欲がなくなったなどの症状が出て胃内視鏡検査を行った際に、胃が硬くなっているため「膨らまなくておかしい」となり気づきます。その時点でかなり進行しており、他の箇所に転移も見られ、手術による治療も難しい、となるというわけですね。初期で見つかったら本当に運が良いのです。
ただ、スキルス胃がん自体はそう発生頻度が多いわけではありません。ですが、原因や予防法もはっきりしていないので、一般的な胃がんと同じく、なるべく早く発見できるように定期的な検査を行っていただくのが対策となるでしょう。
胃がんの予防に効果的なピロリ菌の除菌
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃の粘膜に生息している細菌です。このピロリ菌に感染すると胃に炎症が起き、その炎症が長く続くと萎縮性胃炎となり、そこから胃がんへと変化していきます。
2013年からピロリ菌感染胃炎に対する除菌療法に保険が適用されて、そこから胃がんで亡くなる人が減少していることからもわかるように、ピロリ菌と胃がんが関連しているのは明確です。
ピロリ菌の感染経路として、経口感染の可能性が高く、乳幼児期に井戸水を飲んだり、感染している親からの口移しでの食事などで感染した人が多そうだと考えられています。上下水道が発達してからの感染率は低く、10代・20代の感染者は少ないようですね。
なお、感染は5歳くらいまでの抵抗力が弱い子どもに起こり、大人になって自己免疫力が高まるとピロリ菌に感染することはないとされています。
当院では呼気によるピロリ菌検査を行っています。今までピロリ菌検査をしたことがないという方はピロリ菌の検査を、過去に除菌したことがある人は胃炎の箇所を観察していく必要がありますから、年に一回の胃内視鏡検査を心掛けるようにしてください。
飲酒・喫煙は胃がんの原因になるのか
飲酒習慣と胃がんについては一応、関連性がありそうと言われていますが、自分の臨床経験では飲酒の有無で胃がんの発生率が違うという印象を持ったことはありません。
一方、喫煙については胃がんの原因というより、あらゆるがんの元となるとわかっています。たばこの煙の中には、5000種を超える化学物質が含まれており、この中には約70種の発がん性物質も含まれています。喫煙をするとそれらの有害物質が肺から全身の臓器に運ばれて、DNAに傷をつけるなどしてがんの原因になるのです。
なお、たばこで影響があるのは喉や肺だけではありません。現在、喫煙している人がなりやすいがんとして、鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胃がん、膵臓がん、子宮頸がん、膀胱がんと広範囲に及びます。
喫煙によってがん以外の病気のリスクも上がることがわかっているので、喫煙をしている人は禁煙をすることによってがんやその他の病気になるリスクを下げることができるでしょう。
胃内視鏡検査を受ける施設の選び方
胃内視鏡検査を検討されている方は、どのように検査施設を選んだらいいか迷われると思います。
「この先生の腕はいいな、性能のよいスコープを使っているな」というのは一般の人には判断できないでしょうから、自宅から通いやすいとか、土日でも検査ができるか、鎮静剤使用や経鼻挿入に対応しているか、口コミで施設やスタッフへの評判を見てみる、というのが指標となり得るでしょう。
苦しさの度合いや、鎮静が効きやすいかどうかは個人差がありますし、医師と患者さんのコミュニケーションの面での相性もあるでしょうから、口コミのすべてが参考になるとは言えませんが…。
当院は札幌駅から徒歩3分と近く、土日にも診療日を設けております。もし私のコラムを読んで、ご自身の考えと合いそうだと感じましたら、ぜひ当院にご相談いただければ幸いです。